5-1 相続不動産は空き家になりがち

ア.相続物件には使い道が無い?

一般的に相続行為が発生するような場合、大体の相続人は立派な大人で、それぞれ自身の世帯を持って自活しています。

自己資産として既に不動産を所有している場合も多くあり、相続した不動産が住居である場合その用途がすぐには無いケースが大半です。

築年数も古く使い勝手が悪い場合が多いので、どうしても使用せずそのまま放置してしまう傾向にありがちです。

イ.空き家として放置すると問題になる

しかし近年、少子高齢化や都市一極集中型の生活様式が定着している事によって、特に人口の多かった世代の死亡に伴いより多くの不動産が空き家としてこれから放置されていき、果ては空き家まみれの国土になると言う問題が浮き彫りになり、政府や相続人は対策の必要に迫られています。

従来から維持をしていく為のコストや毎年の固定資産税などの負担が厳しい不動産ですが、今後空き家を放置する事で所有者に及ぼすデメリットがさらに厳しくなっていきます。

そこで本コラムでは、相続不動産を所有者のアイディアで有効活用している事例を見ながら、その価値を見出し活用する方法を考えていきたいと思います。

5-2 空き家が起こす諸問題

近年その問題がクローズアップされ、問題が深刻化している感がある空き家問題。では具体的に空き家が近隣に及ぼす悪い影響にはどんなものがあるのでしょうか?

ア.地域の美観を損ねる

単に空き家と表現すれば、そんなに大層な事ではないように思いますが、平たい言い方をすればそれは主を失って朽ちていく一方のいわば「廃墟」です。

うっそうと雑草が生い茂り、外壁にはひびが入り蔦が巻き、屋根瓦が落ちて窓のガラスが割れ、散乱している状態は見ているだけでも薄気味悪いものでしょう。

手入れが行き届いていない、生活感の無い空間は、町全体の活気に悪い影響を及ぼします。

イ.衛生的な問題

ゴミを捨てるのにもお金を取られる世知辛い世の中で、まず空き家は格好のゴミ捨て場になってしまいます。

もちろん捨てる人のモラルを疑う問題ではありますが、そこに捨てても怒られない場所があるというのにも筆者は不謹慎ながら一理を感じてしまいます。

まず処分に困る粗大ゴミが集まり、空き缶、たばこの吸い殻、生ゴミ。結果その空き家に異臭が漂い、虫がわいて近隣住民が直接的に迷惑を被る事になります

ウ.防災的な問題

荒廃した建物が地震や強風で倒壊したらそれこそ大惨事です。屋根瓦が飛んだり倒れた建物の下敷きになって近隣住民が死傷してしまう可能性があります。

また先ほどの例にもあったたばこの吸い殻に火がついていたとして、燃えやすいゴミや雑草がたくさんあるところで火がついたらその被害は甚大です。

火の勢いが増し隣家に類焼、果てはその一角すべての住居が全焼し、死傷者が出る可能性も否めません。

エ.防犯的な問題

火事の原因はたばこの不始末に限らず、咎める者がいない空き家に侵入者は付き物だと思います。放火の可能性も勿論考えられます。

同時に、廃墟に侵入者が引き起こす犯罪行為も考えてみましょう。拉致監禁や暴行傷害、殺人、死体遺棄。薬物の取引や製造や盗難品の隠し場所。枚挙にいとまがありません。

このように深刻な問題の種が、人目につかない空き家にはたくさん潜んでいるのです。

5-3 空き家に対する公の施策

空き家問題について政府や地方自治体で進めている政策は、放置することを諫める物と、その活用を促す物の2本柱で構成されています。

大まかなベースについては国土交通省が定めた、「空き家対策特別措置法」に準拠し、関係省庁や地方自治体で様々な事業が実施されています。詳細については管轄の行政体により異なるため、ざっくりその内容について紹介します。

ア.放置を諫める政策

使用の実態がない空き家に関して特に近隣の生活に悪い影響を及ぼす可能性のある空き家について「特定空き家」に指定し、その処分について行政が介入する権限が与えられました。

指定された空き家の所有者に対し是正の勧告や命令を出したり、強制代執行による物件の差し押さえや解体が自治体の判断で可能になります。

また、固定資産税についても内容が変更になり、従来建物が残っていることにより減税されていた税額が、特定空き家についてその特例から除外されて用途の無い空き地と同じように課税される様にもなります。

税額に関しては6倍に跳ね上がると言う試算も出ていて、空き家の所有者は騒然としています。

イ.活用を促す政策

対して活用を促す政策の方は手厚いものが多いようです。

基本的には政府2:自治体2:民間1と言った負担割合で先出の法に則り各自治体が事業の窓口として積極的に展開しているようです。

内容としては、その用途を考えるための専門家のアドバイスやセミナーの開催に始まり、所有者や地域からプレゼン計画書を受けてそれに必要なコストを補填する補助金制度等が現在注目されています。

地域創生に絡み受け入れた移住者に対して住居をあっせんするための空き家バンク制度の設置などもその活用を促す有効な制度です。

5-4 支援を受けて物件を再生しよう

支援の内容についてはその用途に応じて様々ですが、この項では一般的な事務手続きについて説明しながら、ざっくりとした流れを説明します。

まず最初に空き家を何に使うのかを考えましょう。自身で住むのか、賃貸に出すのか、事業に利用するのかなどのゴールを決めます。

次に地域を管轄する自治体にある相談窓口で、空き家を活用するための支援策についての説明を受けます。この時点で空き家の用途が決まっていれば、それに適した支援事業をさがす手間が省け、話が早く進みます。

そして申請の為に必要な書類やパンフレットを持ち帰り、具体的な準備に入ります。リフォーム業者に物件を査定してもらい、プランと見積もりを作ってもらいましょう。

事業用に空き家を使う場合、その事業の内容によって許認可が必要な場合があります。

その場合その仕様について決まりがあるので、リフォーム業者との打ち合わせの際には必ずその内容を伝え仕様に合ったプランニングをしてもらいましょう。

見積書が出たら、申請書類に添付して自治体に提出します。審査結果を待つ間に空き家の周辺の草刈りをしたり、不要物の撤去を進めておきましょう。

審査が完了し、正式に認定が下りれば、補助金は1週間程度で振り込まれます。業者に仮払いをして工事にかかります。

完成までの間に許認可事業などの場合は許認可申請もしておきましょう。申請段階で図面を提出し。完成時に検査して貰う事で供用開始までのタイムロスを軽減できます。

5-5 古家の再生事例

では、実際に自治体の制度を利用して空き家を再生しているケースを一つご紹介します。

こちらは九州大分県は中津市のリフォーム業者によって工事事例として紹介されているケースです。中津市の助成金制度を利用しリフォームを施した空き家を、空き家バンクに登録して移住者の住居として提供している例です。再生費用の約半分程度の補助金が出ているようです。

(参考サイト:有限会社松葉建設

5-6 まとめ

筆者が長く不動産の事業に携わる中で、不動産を相続した相続人は一様にその存在を重く感じ、対応に手を焼いている印象でした。

今般の法改正の折でもネガティブな印象ばかりが残り、先祖が遺してくれた財産であるにも関わらず、その印象として負の財産であることが多いのが現実です。

しかし考え方ひとつでピンチはチャンスに変わります。保守的な考え方で不動産の維持を考えることにより結局空き家問題で近隣住民に迷惑を掛けたり、地方創生で頑張る人たちの足を引っ張っていく結果になってしまうでしょう。

周囲の同じ現状を抱えている人や、町全体で協力し合うことによって、朽ち果てていく財産は経済をけん引し足り得る重要なツールとして生まれ変わることが出来、あなたの財産にも近隣の熱い視線が注がれているのです。

今回の特集には、古くからある相続の風習や常識の殻を破り、時代に合った選択で今を生きるすべての人がより幸せで豊かな人生を送るために必要と筆者が考える知恵や世相の流れについての説明、そして何より一人でも多くの人に心身ともに豊かな生活を送っていただきたい筆者の気持ちをたくさん込めました。

本コラムを読んでいただいた皆様全てが豊かな人生が全う出来るよう、筆者は心よりお祈り申し上げております。

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