特集 不動産の相続、その概要と対策完全ガイド

人の子として生まれ育ち、やがて独立し結婚して自らも子を設け、育てる。世界のどこに住んでいても誰しもがこのサイクルを踏襲します。

そしてこのサイクルに当然の如くついて回るのが相続の問題です。包括承継主義と呼ばれる日本の相続制度には、相続人相互の自己責任と調和が求められ、心情的にも手続き的にもその完成にはただならぬ手間と労力、そしてコストが必要になります。

ここでは特に手続きが困難な相続不動産に関して、現実にその場面を迎えるにあたっての具体的な準備や対策、手続きの内容に至るまでできる限りわかりやすく詳細に説明したいと思います。

①貰うだけではない。不動産相続にかかるコストのお話

1-1 相続と贈与の違い

それらにかかる税率や控除の内容、または特例の違いなどから比較される事の多い相続と贈与。具体的にどのように異なるか説明します。

まず概念の違いとして、

ア.相続は亡くなった肉親の財産を引き継ぐ手続きである。

これに対し

イ.贈与とは所有者が存命中に自身の財産を自分以外の人に交付する手続き。

財産の交付を行う所有者が存命であるか否かで、その内容は大きく異なります。下記に一覧としてまとめました。

相 続 贈 与
内容 人の死亡を原因として、財産が一定の親族に移転する事 契約に基づいて、財産を相手方に無償で与える事
財産をもらう人の範囲 一定の親族関係にある人 誰でも
財産移転の時期 被相続人の死亡時 随時
課税される税金の種類 相続税 贈与税

贈与についてはその対象が親族に限られておらず、所有者の意思にて決定する事が出来ます。

もしも故人の遺言書に第三者に財産を分与する旨が記載されている場合、これは「遺贈」に当たり、被相続人の死亡を原因として行われる第三者への贈与行為として成り立ちます。相続人はこれに従う必要があり、遺贈を受けた人は相続税を収める必要があります。

1-2 財産分与

相続財産についてはその相続割合と優先順位が法によって定められています。続柄は被相続人から見た関係です。

配偶者は常に法定相続人

  • 第1順位:子・孫・曾孫
  • 第2順位:父母
  • 第3順位:兄弟姉妹

基本的な相続の割合は、配偶者が2分の1、残りを子がその頭数で平等に分割します。子供がいない所帯の場合、配偶者の割合は3分の2となり、残りの3分の1は、故人の尊属に対して第2順位、第3順位の法定相続人へと権利移行します。

ここで、一般的によくある話で相続財産から不動産のみを長男に生前贈与していたり、遺言書に長男に相続するという文言がある場合があります。

遺言を優先しその所有権は長男に帰属しますが、ほかの法定相続人はこの不動産の価値ベースで、相続割合の半分(遺留分)の相続権利が法により定められています。

遺言は履行出来ますが、この遺留分については権利の侵害となるので物件の相続人は不動産を受け継ぐにあたり他の相続人に対しこれを弁済する義務がありますので注意が必要です。

1-3 相続にかかる税金

相続税は、遺産の総額から控除額を引いた残額に対して一定の割合で課税されます。税額の控除には以下のものがあります。

ア.基礎控除(3,000万円+相続人数×600万円)
イ.被相続人の負債
ウ.葬儀に掛かった費用

また、生計を故人と一にし、これからも生活を続ける家屋を相続するにあたり、小規模宅地等の特例や、配偶者控除と言った特例も存在します。

相続する財産の総額や、不動産の規模、用途等で大きな以外があるため、以下のHPを参照して自身に関係する部分については計算をしてみて下さい。

国税庁ホームページ「相続税特集」

1-4 実測、筆界確認に必要な手続きとその費用

相続により不動産を受け継ぐ上で最も難しいのが、その権利にかかる部分です。これこそ被相続人が亡くなった後でわからない事が出てきたら取り返しのつかない事態になり兼ねません。

関係者が皆様がご存命で、はっきりと意思を持ってお話しできる間にクリアしておかないと、あとで不動産そのものの価値を失ってしまう可能性もあるため注意してください。

ア.地積の確定測量と地積更正登記(実測登記)

古くからの不動産を受け継ぐにあたりとてもよくある話が、その土地の面積が登記簿謄本に記載されている面積(公簿面積)と実際の面積(実測面積)とで違うと言う事です。

昔の測量技術の問題も多少関係する場合もありますが、登記情報と言うものは自己申告であるが故に、現在では考えられない事ですが税金を安く抑えるために過少申告しているケースもあります。

相続した不動産を未来永劫一子相伝で相続し続けるのであれば問題かもしれません。しかしもしこの物件を売却する予定があるならば、この問題はクリアしておくのが絶対条件です。

土地の正確な面積を測った上でそれに基づいて登記簿の情報を更正する必要があります。地積の実測費用は、売買を前提とした確定測量の場合で約30万円程度。地積更正登記の費用は5万円程度。消費税込みで約40万円のコストが掛かります。

イ.隣家との境界をはっきりさせる

土地の使用に当たりその便宜を図るために、建物の一部が隣地の上に跨っていたり、土地が隣地に食い込んでいることもあります。

建築等の当時双方での話し合いがあい、協定してそうなっている事が多いのですが、境界や登記を変更している例は少なく、事情をよく知らなければ紛争の種になり得ます。

話は前後しますがこういった場合も売却を前提にして考えると、物件を購入後に隣地の所有者から申し出があって、購入者が損害を被る可能性が十分に考えられるので訳アリ物件という扱いになり、売主がその損害分を担保する、もしくは前もって隣地所有者との再協議をし、双方合意の上で再登記をする必要があります。

この場合、食い込んでいる面積に路線価を掛けて金額を出し、その金額で隣地所有者から買い取るのが一般的ですが、何代も経て第三者に渡る土地となると金額の折り合い等で交渉が難航する事があります。

これも出来れば当事者間で先に問題解決しておくことが、後々物件に訳アリのレッテルを貼られない為の対策となります。

1-5 所有権移転登記費用

相続には相続税がかかりますが、不動産の事務として所有権移転のコストはこれとは別途に掛かります。相続の場合、協議のテーブルに着く前に被相続人の出生から死亡までの調査を行い、すべての相続人をまとめる必要があります。

必要な書類は多岐に渡り、もし被相続人が日本中を行ったり来たりしているような人だった場合、その全ての居住地を管轄する役所から書類を頂くなどと言う手間も考えられます。場合によって現地に赴く費用も計算しておかなければいけません。

全ての相続人が揃ったところで、遺産分割協議を行いますが、これも一筋縄ではいかないでしょう。増してその相続関係が複雑であった場合、たとえ親族とは言えほぼ面識のない相手とお金の話をする事になります。

こういったものは個々のケースにより金額に開きがあるので、これについても事前に計算することが必要です。

登記にかかる実際の費用としては、30~40万円くらいと言ったところです。

1-6 まとめ

いかがでしたか?相続には複数の人の損得が関り、一人の考えや遺言通りでは納得する人も少なく、どうしてもその進行はスムーズにはいかないものです。

これらを事前に把握し、関係者の間で処理しておくことは本当に大切なことである事が伝わったでしょうか?

たとえ面倒な作業であったとしても、皆さんがこのコラムを読んで、自身の現状に照らし合わせた上で適当な処理に至るきっかけが出来る事を、筆者は切に望んでおります。

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