任意売却するために絶対やってはいけないこと

この特別企画:高く家を売るための任意売却をご覧になって、「ローン返済が厳しくなったら任意売却を選択しよう。」あるいは「既に滞納されている方であれば、任意売却しよう。」と決断された方も多いと思います。

しかし、任意売却を行いたくても出来ないケースがあるのも事実です。そこで、任意売却を行うにあたって、絶対絶対にやってはいけない行為について解説したいと思います。

<要注意>税金や社会保険は絶対に滞納しないでください。

現役時代、任意売却できないケースのNo1が自治体の差し押さえです。

会社員の方であれば、住民税や社会保険料は毎月の給料から天引きされるため滞納しようが無いのですが、求職中の方やリストラされた方は、自分で納めなければなりません。

住民税と社会保険は、前年の年収に応じた金額が請求されます。「特に現在求職中の場合は、支払いが厳しいため、納付書が送られてきても放置してしまう。」方もいらっしゃるかと思います。

特に住民税や社会保険は前年度の年収に対して課税されますので、リストラなどで収入が無いにも関わらず一般の会社員並みの金額が請求されることになります。

また、税金は自宅に納付書が送られてくる固定資産税ですと、一括か分割での納付を選択できます。

税金を滞納すればわかるのですが、自治体の場合ですと督促が厳しくありません。手持ち資金にゆとりがないと、どうしても後回しになりがちですが、「任意売却を成功させたい」のであれば、いの一番に支払うようにしてください。

理由は、ある日、突然何の前触れもなく差し押さえが入るからです。差し押さえが入ると任意売却を行うにあたって、非常に大きな障害になるからです。

資金配分の考え方でも解説しましたが、慣例として「固定資産税の1年分または10万円のいづれか低い金額」となります。

特に1都3県(東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県)ですと地価がそれなりにしますので、固定資産税も10万円以上するエリアでしたら、自治体への資金配分は10万円となります。

この金額を自治体が納得しなければ任意売却が不可能になり、競売となります。

現役時代、任意売却ができなかったケースで最も多かったのが、自治体が差し押さえを外してくれず、やむを得ず競売となってしまったことです。

税金については、一括での支払いが厳しい場合は、分納にする。分納も難しければ、自治体の窓口へ行き事情を説明して少しずつでも納めていれば差し押さえを回避することができます。

重要なことは、督促が無いからといって滞納を放置しないことです。

よく覚えておいて欲しいのが、一般的な債務は、差し押さえの手続きを裁判所経由で行わない限り、たとえ延滞し続けたとしても勝手に差し押さえることができません。

一方、国や自治体は、職権で差し押さえることができます。税金を払わず放置していたところ、知らない間に差し押さえられていた。というケースはよくあります。

こうなると、自治体もサービサーと同様に債権者となり任意売却の了解を取る必要があります。

現役時代の体験談

それでは、税金滞納が原因で任意売却が成立しなかった事例をご紹介します。

Dさん、49歳、東京都心まで約40分程度のJR沿線に20年前にマンションを購入。大手家電メーカーS社に長年勤めていましたが、関連会社への転出か退職かの選択つまりリストラ宣告を受けました。

なお、Dさんが提示された転出先が、配送業務の警備員としての業務でした。それまで、大手家電メーカーの営業マンという自負もあり、迷うことなく退職を決断しました。

Dさんは、過去に何度かトップ営業マンとして社長賞を受賞したこともあり、再就職に関しては、非常に楽観的でした。しかし、現実は大変厳しいものでした。

再就職にエントリーしても不採用の連続です。理由は、大手企業に27年間在籍していたことによる高すぎる給与体系とDさん自身のプライドの高さが原因でした。

また、日常生活も変わりました。いままで、朝早くから夜10:00過ぎの帰宅が当たり前だったのが、少しでも家計を助けるためパートに出る奥さんを見送る毎日となりました。

おまけに再就職先がなかなか決まらず、気持ちも荒んでいきました。

当然、家庭内の雰囲気も一変しました。大学2年になる長男は、学費を支払えなくなったことによって学費の支払いを奨学金としたこと。最も大きかったのが、奥さんと別居を余儀なくされ家庭が崩壊してしまいました。

永年連れ添った奥さんとの別居が決定打となり、再就職への気力も無くなり住宅ローンの滞納を放置していました。

いよいよ、裁判所からの競売開始決定の通知が届きます。

さすがに、「競売」という文字を見て響いたせいか?無料の不動産一括査定サイトから私の会社へ相談がありました。

競売開始から任意売却までのタイムスケジュール、競売と任意売却のそれぞれのメリットデメリット、さらに担当者としての私の実績を説明しますと、「任意売却でぜひ行いたい。」ということになりました。

さて、任意売却で最も重要なことが、今の家がいくらで売却できるか?ですが幸いなことにDさんのマンションは、人気沿線ですし新宿まで急行20分。さらに最寄駅から10分以内という好立地です。

私の査定額としては、2,200万円としました。

購入時期 1994年
購入価格 5,100万円 自己資金800万円
借入額 残債
①住宅金融公庫
※ゆとり返済を利用
4,080万円 3000万円
②都銀ローン 220万円 0万円
合計 4,300万円 3000万円

その他、固定資産税と住民税の滞納150万円

税金滞納による差し押さえ

Dさんの残債状況を確認しますと都銀の住宅ローンは既に完済し、旧住宅金融公庫と地方税を滞納したことによる差し押さえ登記が実行されていました。

これは、固定資産税と住民税の滞納150万円が原因です。差し押さえ登記を実行された以上は、市側にも任意売却を行う旨の承諾を得る必要があります。

私は、過去に同じ市で任意売却を行った際に市側と交渉して、差し押さえ登記を外すことに成功した経験がありますので、今回も大丈夫だろうと考えていました。

1番抵当での債権者には、売却価格から仲介手数料等の必要経費を差し引いた金額で了承いただき、市側にはハンコ代として10万円の配分案を作成しました。

なぜ、市側が10万円の配分案かと言いますと債権者が旧住宅金融公庫(現:住宅金融支援機構)の場合、ハンコ代として認められる額が1年分の固定資産税あるいは10万円のどちらか低い額となっているからです。

もちろん、競売で落札されますと市側にとっても1円も回収できませんので、例え10万円であったしてもハンコ代として了承するはずだと考え市へ出向きました。

初めての任意売却の失敗

さて、市側の担当者にDさんからマンション売却の依頼を受けたことを告げ、現在の生活状況、税金を滞納せざるを得ない状況、債務の状況等を一通り説明し、

私・・・
「このままだと競売になってしまいます。競売ではなく、市場で売った方が間違いなく高く売れます。市側にも10万円の配分があるため競売よりも有利です。ぜひ、任意売却で了承いただけませんでしょうか。」と打診しました。

すると意外な答えが返ってきました。

市側・・
「市側としては、競売で問題ないと考えております。150万円の滞納がありながら、10万円の分配金で差し押さえ登記を外すことは、税金を安くすることと同じではありませんか?そんなことは、市側としては認めるわけにはいきません。」

「例え任意売却によって10万円回収できたとしても金額の問題ではありません。」

私・・・
「例え10万円であったとしても市の財政としてはプラスになるでしょうし、旧住宅金融公庫(現:住宅金融支援機構)の基準では10万円ですが、第一抵当権者に交渉して、数万円程度であれば上乗せ可能です。」

市側・・
「税金をまけることに変わりはありませんから、一切認めるわけにはいきません。これは、市の方針です。」

私・・・
「以前、私は今回と同じケースで任意売却を行った際は、了解を得ました。本当に市側の方針なんですか?担当者によって、対応が変わることはありませんか?」

市側・・・
「それはありません。とにかく市の方針です。税金を安くする交渉には一切応じられません。」

このようにしばらく粘ってみたのですが、交渉には一切応じるつもりは無く、結局Dさん宅は、税金滞納による差し押さえが原因で任意売却を行うことができませんでした。

なお、Dさん宅から200メートル先の某市では、任意売却にも柔軟に対応してもらえます。ほんの数百メートルの市の境界が明暗を左右したという事例です。

なぜ、対応が180度も変わってしまったのでしょうか?

それでは、Dさんのマンションが立地する市側の対応がなぜ、180度も変わってしまったのでしょうか?

私は20年不動産業に従事していますが、特に旧住宅金融公庫(現:住宅金融支援機構)の「ゆとり返済」を利用していた人のローン破綻を非常に多くみてきました。

住宅ローンが破綻しますと固定資産税や住民税の滞納によって、差し押さえが入ります。

実は、Dさんの市は市長が変わり税金滞納や回収に関する考え方が変わりました。「税金を滞納したら、家を差し押さえて競売にかけるぞ。」という考え方に変わったのでしょう。

もちろん、固定資産税や住民税だけの地方税だけではなく、所得税を滞納すること、今度は国が差し押さえを行うことになります。そうなると、交渉は非常にやっかいです。

何度も申し上げますが、私が現役時代に担当した中で、任意売却ができなかった原因の第一位が税金滞納による差し押さえです。

私の個人的な見解となりますが、マンションの場合は、管理費や修繕積立金はいくら滞納しても問題ありませんが、税金の滞納だけは気をつけてください。

支払いが厳しくなれば、住宅ローンと同様に市側の窓口へ行けば相談に応じてもらえます。早め早めの対策が重要です。

特別企画:高く家を売るための任意売却【目次】
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